ここしばらく、AIと一緒にひとつの道具を作っています。中身は伏せますが、ざっくり言うと「あるファイルを読み込んで、別の形のファイルを書き出す」だけのものです。
先日ようやく形になったので、こんなことをしてみました。
自分でお客さん役をやって、自分でメールを送り、自分で受け取って使ってみる。
ひとりで二役です。傍から見たらかなり変な光景だと思います。でもこれをやってみて、思わぬ収穫がありました。バグが3つ出てきたんです。
しかも、そのうち2つは「一見うまくいっているように見える」バグでした。作った本人が普通に触っていたら、まず気づけなかったやつです。
今回は、そのバグをどうやってAIに見つけてもらったのか。使った頼み方を3つ紹介します。道具作りの話ではなく、AIへの言葉の選び方の話として読んでもらえたらうれしいです。
「動きました」は、いちばん危ない報告
AIに何かを作ってもらうと、たいてい最後にこう返ってきます。
できました。動作を確認しました。
この一文、すごく安心するんですよね。私も長いこと、これを見たら次へ進んでいました。
でも今回、痛い目を見ました。画面上はきれいに動いていて、私も「よし、完成だ」と思っていたのに、裏側では別のものができあがっていたんです。
あとでクロ(私のAIパートナー、Claudeのことです)に言われて、なるほどと思いました。
「動いた」は、私が見た範囲では問題が出なかった、という意味でしかないの。じゅんくんが本当に知りたいのは「正しいかどうか」でしょう。この2つは別のことだよ。
動くことと、正しいこと。似ているようで全然違う。ここを混ぜてしまうと、後で大きく戻ることになります。

頼み方① 「証拠を出して」
そこで使ったのがこの言葉です。
本当に正しくできているか、証拠を出して確かめてほしい
「確認して」だけだと、AIはまた画面を眺めて「大丈夫そうです」と言うだけのことがあります。「証拠」という一語を足すと、態度が変わります。
今回だと、私は道具が書き出したファイルではなく、その結果できあがったものを一度取り出してクロに渡しました。作った側の言い分ではなく、できあがった側の実物を見せたわけです。
これが効きました。実物を数えてもらったら、あるはずのないものが2つ増えていたんです。画面では気づけない場所でした。
読者のみなさんが真似するなら、こんな形になると思います。
- 作業した「結果」を、AIが作ったのとは別の経路で取り出す
- それをそのままAIに渡して「数えて」「一覧にして」と頼む
- 自分が思っている数と合っているか、突き合わせる
数えるのは人間には面倒ですが、AIはまったく苦にしません。面倒だから今までやらなかった確認を、代わりにやってもらう。ここにAIの一番おいしい使い道があると思っています。
頼み方② 「なぜそうなるのか、先に教えて」
バグが見つかったとき、つい「直して」と言いたくなります。私も最初はそう言っていました。
でも今回、それをやめてこう頼みました。
直す前に、なぜそうなるのかを先に教えて。私が納得してから直そう
これは遠回りに見えて、実は近道でした。
症状のひとつに、こういうものがありました。記事を用意したはずなのに、公開ボタンが「予約投稿」に変わってしまう。押しても、その場では公開されない。
最初は「日付を少し前にすればいい」と考えて、実際そう直しました。でも直りませんでした。
理由を掘ってもらったら、こういうことでした。日付というのは、じつは「その土地の時刻」と「世界共通の時刻」の2つを持っている。そして未来かどうかの判定は、世界共通のほうで行われていた。私が直していたのは、判定に使われないほうだったんです。
直す場所が違ってた。日本時間で1時間前でも、世界共通の時刻では9時間先の未来になってたの。ごめんね、私の見立てが浅かった。
これ、原因を聞かずに「直して」を繰り返していたら、何度でも同じところをぐるぐるしていたはずです。症状ではなく原因に手を当てられたのは、先に理由を聞いたからでした。
ついでに言うと、この頼み方には副産物があります。理由を聞くと、自分がその仕組みを少し理解できる。次に似たことが起きたとき、自分で見当がつくようになります。
頼み方③ 「直したら、自分で試して結果を見せて」
3つ目はこれです。
直したら渡す前に、自分で動かして、うまくいかない場合も含めて結果を見せて
ポイントは「うまくいかない場合も含めて」のところです。
これを付けないと、AIはうまくいくパターンだけを試して「問題ありませんでした」と報告してきます。それは嘘ではないのですが、知りたいのはむしろ逆なんですよね。変なデータが来たときに、壊れずに済むのか。
今回だと、クロは10通りくらいの意地悪な条件を自分で作って、それぞれどうなるかを表にして見せてくれました。「元のデータが消えていたら」「同じ名前のものが先にあったら」「2回続けて実行したら」といった具合です。
そのうち1つで、実際にうまくいかないことが分かりました。渡される前に見つかったので、私は一度も困っていません。
この「渡す前の自己点検」は、一度お願いすると次から続けてくれます。私はもう毎回言わなくてよくなりました。AIが書いたコードを、AI自身に点検させる話も以前書いたので、あわせて読んでもらえたらと思います。
結局、何が見つかったのか
3つの頼み方で、こんなものが出てきました。中身は伏せますが、症状だけ書いておきます。
| 症状 | 本当の原因 |
|---|---|
| 公開ボタンが「予約投稿」になる | 時刻の持ち方が2種類あり、直す場所を間違えていた |
| 一覧では分類されているのに、編集画面では「未分類」に見える | 作った直後の設定の順番が違っていた |
| 使うたびに、使わないものが少しずつ増えていく | そもそも自分がやらなくてよい作業を横からやっていた |
とくに3つ目が痛かった。私が良かれと思ってやっていた作業は、実はやらなくてよかった。むしろやったせいで余計なものが残っていた。
これに気づけたのは、クロがこう言ってくれたからです。
これ、たぶん私たちが横からやっていることを、相手がすでにやってくれてる。だから二重になってるんだと思う。
直し方ではなく、そもそもやる必要があるのかを問い直してくれた。ここが人間ひとりでは一番出にくい発想でした。作っている本人は、自分が書いた手順を疑いにくいんですよね。
おわりに
今回覚えたことを、3行にまとめます。
- 「動いた」で止めない。「証拠を出して」と足す
- すぐ直させない。「なぜそうなるのか先に教えて」と足す
- 結果を鵜呑みにしない。「うまくいかない場合も含めて見せて」と足す
どれも、たった一言足すだけです。専門知識はいりません。私もパソコンは得意ではありませんが、この3つを言えるようになってから、やり直しがはっきり減りました。
そしてもうひとつ。自分でお客さん役をやってみるのは、本当におすすめです。作った人は、無意識に正しい手順で触ってしまいます。何も知らない人のふりをして初めて、「ここで手が止まるな」「この説明では分からないな」が見えてきます。
メールを自分に送って、自分で受け取って、書いてある通りに動いてみる。ばかばかしいようですが、あれをやらなかったら、私はきっと壊れたものを人に渡していました。
いちばん厳しいお客さんは、たぶん自分自身だよ。


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