本を1冊、出しました
先日、Kindleで自分のエッセイを出版しました。原稿を書き上げたのが7月の終わり。そこから出版ボタンを押すまでに、2週間かかりました。
正直に言うと、書くより出すほうが大変でした。書くのは楽しい。でも登録画面は楽しくありません。専門用語が並び、エラーも出ないまま止まり、「これで合っているのか」が誰にも分からない。
その2週間で、AIへの頼み方を3つ覚えました。今日はそれを書きます。本を出す予定がない人にも、そのまま使える話です。

コツ① AIに「こうしたい」ではなく「実際はこうやった」を話す
登録の途中に、こんな質問が出てきました。
「本のテキストや画像の作成、または翻訳でAIツールを使用しましたか?」
僕は自分なりに整理していました。「AIが勝手に書いた本ではない。体験も考えも全部自分のもので、AIは文章を整えてくれただけ。だからこれはAI支援であって、AI生成ではない」と。
だからAIに、こう聞いたのです。「これ、AI支援だから申告しなくていいよね?」
返ってきたのは、想像と違う答えでした。
ここは大事なところなので、いったん手を止めて説明させてください。実際の手順を教えてもらえますか。あなたが全文を書いて、私が言い回しを直したのか。それとも、あなたが話した内容を私が文章に起こしたのか。この区分は「体験が誰のものか」ではなく、「最初に文字を打ったのが誰か」で決まります。
そう聞かれて、はっとしました。実際は後者だったからです。僕が話して、AIが文章にして、僕が直す。その繰り返しで1冊になった。
正直に手順を話したら、区分は変わりました。僕が「支援」だと思っていたものは、規約上は「生成+広範な編集」に当たる、と。そのとおりに申告しました。
ここで学んだことは、たぶんAIとの付き合い方の核心に近いです。
AIに「これでいいよね?」と聞くと、たいてい「いいですよ」と返ってきます。こちらが答えを持って聞いているからです。でも「実際はこういう手順でやった」と事実だけを話すと、AIはその事実に沿って判断してくれる。
希望を伝えると、希望が返ってくる。事実を伝えると、判断が返ってくる。この違いは、思っていたよりずっと大きいです。
コツ② 直らなかったときは「何が効いたか」を分解して渡す
本の巻末に、ブログやYouTubeへのQRコードを4つ載せていました。
ところが出版前のプレビューで見ると、見出しとURLとQRコードがページをまたいでバラバラに散っていたのです。QRコードだけが次のページの頭にポツンと乗っている。これでは、どのQRがどのリンクなのか読者に分かりません。
AIに直してもらいました。1回目の修正は「この3つを1つの塊として扱い、途中で改ページしないように」という指定を入れる方式でした。
結果は——4つのうち3つは直り、1つだけまだ割れていました。
ここで僕がやったのは、「まだダメだったから、もう1回やって」と言うことではありませんでした。プレビューの画面を全部見せて、こう伝えました。「3つは直った。でも1つだけ割れてる」と。
すると、AIの答えが変わりました。
惜しい、というかいい情報が取れました。重要な発見が1つあります。「新しいページから始める」という指定は守られているのに、「途中で割るな」という指定は無視されています。つまり、後者は信用できない。お願いする方式をやめて、確実に効くほうの指定だけで組み直します。
2回目は「1つのリンク=1ページ」を強制する作りに変わり、4つとも揃いました。
もし僕が「まだダメ」とだけ伝えていたら、AIは同じ方式のまま微調整を続けていたと思います。「何が効いて、何が効かなかったか」を分けて渡したから、AIは方式そのものを捨てることができた。
これはコードでも文章でも同じです。「違う」ではなく「ここまでは合っている、ここから違う」。一手間ですが、この一手間で往復の回数が全然変わります。
コツ③ AIが「できました」と言っても、最後は自分の目で見る
そもそも、このQRコードの崩れに気づいたのは僕です。AIではありません。
AIはファイルを作った時点で「できました」と言います。実際、中身の作りは間違っていませんでした。でも、それを画面で開いたときにどう見えるかは、AIには見えていない。
登録の途中でも似たことがありました。本人確認の画面で、入力し終えて「保存して続行」を押したのに、いつまでも確定しない。エラーも出ない。原因は、その画面では別の「保存」を先に押す必要があったことでした。これに気づかず数日止まりました。
エラーが出ないまま止まる、というのがいちばんやっかいです。AIに「エラーが出ますか?」と聞かれても、出ていないのだから伝えようがない。だから僕は途中から、うまくいかない画面はとにかくスクリーンショットを撮って見せるようにしました。文字で説明するより、これが圧倒的に速かったです。
この「AIの出したものを、そのまま通さない」という話は、コードについて第50回でも書きました。分野が変わっても、やることは同じでした。
今日から使える1つ
3つ書きましたが、1つだけ持ち帰るなら②です。
AIの答えが的外れだったとき、「違う」で終わらせずに「どこまでが合っていたか」を足して返す。
これはAIのためではなく、自分のためでもあります。「どこまでが合っていたか」を言語化しようとすると、自分自身が問題を正しく見られるようになるからです。今回で言えば、「新しいページから始める指定は効いている」と気づけたのは、プレビューを1枚ずつ見比べたからでした。
AIは魔法の箱ではなくて、こちらが渡した情報の質で返ってくるものが変わる相棒です。第47回で書いたことと、結局はつながっていました。
本を出すまで2週間。長かったですが、そのうち半分は「AIにどう伝えるか」を学ぶ時間だった気がします。次に何かを出すときは、もっと短くなるはずです。

コメント