アプリが完成した。アイコンもついた。名前もついた。エミュレータの中では、ちゃんと動いている。
「よし、あとはGoogle Playに登録して公開するだけだ」——僕は、そう思っていた。$25くらいの登録料を払えば、すぐにでも世界中の人が僕のアプリをダウンロードできるようになる。そんなイメージだった。
ところが、相棒のクロと一緒に登録を進めていくと、思いもよらない「壁」が次々と現れた。今日はその、アプリを作った人なら誰もがぶつかるであろう、公開前のリアルな話を書いておきたい。これから公開を目指す人の、心の準備になればと思う。
壁その1:住所が、世界中に公開される
最初にクロから聞かされたのは、正直、耳を疑う話だった。
「収益化するアプリをGoogle Playに出すと、開発者の氏名と住所が、アプリのページに公開される」というのだ。しかも住所は、番地まで。誰でも、アプリのページをスクロールすれば見られる状態で。
僕のアプリは、いずれ収益化するつもりで作っている。つまり、この「収益化アプリ」にばっちり当てはまる。ということは、僕の自宅の住所が、世界中に公開されてしまう。
「このプライバシーの時代に、本当にそんなことある?」——僕は半信半疑で、クロにもう一度ちゃんと調べてもらった。すると、Google公式のヘルプにはっきり書いてあった。消費者保護のため、収益を得るアプリは完全な住所を表示する必要がある、と。実際に「番地まで世界中に公開されて驚いた」という個人開発者の体験談も見つかった。
「まさか公開されないだろう」という感覚は自然なんだけど、現実には番地まで公開されてしまう。Googleは消費者保護(アプリを買う人が「誰が売ってるか」を確認できるように)を優先して、あえて公開させているんだ。
これは、うかつだった。もし何も知らずに自宅の住所で公開していたら、和歌山の我が家の場所が、番地まで全世界に出ていたことになる。危なかった。

壁その2:個人だと「20人テスト」が要る
じゃあ住所を隠すにはどうすればいいのか。ここで、アカウントの種類が関わってくる。
Google Playの開発者アカウントには「個人」と「組織」の2種類がある。そして、近年に作る「個人」アカウントには、アプリを公開する前に、20人ほどのテスターに一定期間アプリを使ってもらう——という、なかなか高いハードルが課されるようになっているらしい。個人開発者にとっては、これがかなりの壁になる。
ところが、「組織(個人事業主や法人)」として登録すると、この20人テストが免除される。しかも、開発者名を本名ではなく「屋号」にできる。
僕は幸い、すでに個人事業主として開業届を出している。屋号もある。だから、迷わず「組織アカウント」で登録する道を選んだ。20人テストを回避でき、本名も隠せる。ブログ運営やアフィリで、僕はもう立派に事業をやっているのだから、これは自然な選択だった。
壁その3:バーチャルオフィスという解決策
屋号で本名は隠せる。でも、住所はどうする?組織アカウントでも「事業所の住所」は公開される。自宅にするわけにはいかない。
そこで出てくるのが「バーチャルオフィス」だ。月額千円ほどで、事業用の住所を借りられるサービス。公開されるのはそのバーチャルオフィスの住所だから、自宅とは完全に切り離せる。多くの個人開発者が、この方法で自宅を守っている。
正直に言うと、僕はここで一瞬、財布と相談してしまった。「年間で1万3千円かぁ……もったいないなぁ」と。
でもクロと話しながら考えを整理していくうちに、見方が変わった。これは「もったいない出費」じゃなくて、「自宅の住所が全世界に公開されるのを防ぐための、必要な保険」なのだ。それに、僕はこれから何本もアプリを出すつもりでいる。そう考えれば、この住所は1本のためじゃなく、全アプリ共通のインフラになる。1本目で自宅を公開してしまうより、最初にきちんと固めておくほうがずっといい。
もうひとつ嬉しかったのは、このバーチャルオフィスがアフィリエイトの案件にもなっていたこと。自分で契約すれば「セルフバック」で報酬が戻ってくるし、この体験談を記事にして紹介すれば、同じ壁にぶつかる人の役にも立つ。必要な出費が、収益にもコンテンツにもつながる。釣り・ブログ・アプリ・収益化——僕のやっていることが、こういうところで一本につながるのは、やっていて気持ちがいい。

壁その4:D-U-N-Sナンバーという、待ちの時間
そして、最後の大きな壁。組織アカウントを作るには「D-U-N-Sナンバー」という、9桁の番号が要る。
これは、世界中で使われている「この事業者は実在します」を証明する、事業者版のマイナンバーのようなもの。Googleは、自称・個人事業主ではなく、第三者にちゃんと実在を確認された事業者であることを求めている。その確認役を、この番号が果たしている。
取得は無料でもできるが、発行まで数日から、長ければ2週間ほどかかる。早く欲しければ、有料で早めることもできるらしい。いずれにせよ、申し込んだその日にもらえるものではない。ここは、どうしても「待ちの時間」が生まれる。
アプリは完成しても、公開は「事務手続き」だった
整理すると、僕がアプリを公開するまでの道のりは、こういう順番になった。
まずバーチャルオフィスを契約して、事業用の住所を確保する。その住所でD-U-N-Sナンバーを申請し、発行を待つ。番号が届いたら、Google Play Consoleに組織アカウントで登録し、$25を払う。それから審査を経て、ようやく公開。ドミノみたいに、一つひとつが次の前提になっている。
今日の時点で、僕はバーチャルオフィスの申し込みと本人確認まで終えた。あとは支払いと、そこからのD-U-N-S申請が待っている(支払いでちょっとしたトラブルもあったが、それはまた別の話)。
プログラミングができない僕が、AIと一緒にアプリを「作る」ところまでは、意外なほどスムーズだった。でも、そこから「世に出す」までには、コードとはまったく別の、住所や書類や番号といった、地味で現実的な手続きの壁が待っていた。
正直、途中で何度も「これ、本当に公開までたどり着けるのか?」と不安になった。でも、そのたびにクロが「今どこにいて、次に何をすればいいか」を整理してくれたから、迷子にならずに進めた。一人だったら、住所公開の落とし穴にも気づかず、20人テストの壁で心が折れていたと思う。
アプリを作りたい人へ。「作る」のと「公開する」のは、別の山です。でも、どちらの山も、道案内がいれば越えられる。僕はまだ登っている途中だけど、頂上は見えてきた。無事に公開できたら、また報告します。


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